Friendの最高経営責任者(CEO)であるアヴィ・シフマンは、サンフランシスコにある広い自宅にわたしを招き入れた。本人はそのアパートを「宮殿」と呼んでいる。
シフマンはリビングルームのソファに腰かけた。着ているオレンジ色のシャツには、イタリア人レーサー、バレンティーノ・ロッシと彼が乗るオートバイをコミック風に描いた絵が入っている。足をサイドテーブルに載せて背もたれに身を預け、首にかけた黄色い紐からは、丸くほのかに光るFriendのペンダントが下がっていた。
これは、物議を醸したネックレス型のAIコンパニオン端末「Friend」の第2世代である。おそらく、わたしを含むほとんどの人が嫌っている製品だ。同社は木曜日、新たに開設したXのアカウントを通じてこの新端末を発表した。
音声で応える新型Friend
初代Friendは常に周囲の音を聞き取り、テキストメッセージで返答するAIウェアラブル端末だった。今回の最大の変更点は、背面にスピーカーを搭載し、音声で返答するようになったことである。これによりペンダントの形状が変わり、スピーカーを備えた裏面は以前より厚くなった。AI性能も強化され、OpenAIの最新モデルを使用するようになった。
初代と同じく、Friendはユーザーが話しかけ、長い会話にも対応できるデジタルな友人を目指している。ただし初代とは異なり、新しいペンダントには声と性格があらかじめランダムに設定されている。ユーザーはAIの声も名前も変更できないので、割り当てられたFriendと付き合っていくしかない。つまり、ユーザーの体験は、どれほど友好的なAIに当たるかによって変わるということだ。
新しいペンダントの価格は249ドル(約38,900円)で、初代の129ドル(約21,000円)から大幅に値上げされた。現在、シフマンが180万ドルで取得したドメイン「Friend.com」のサイトで購入できる。また、月額10ドルの有料プランも用意されており、加入するとAIはユーザーとの会話を30日を超えて記憶できるようになる。シフマンが首にかけているカラフルな紐は、今年後半に発売予定だというアクセサリーのひとつだ。
物議を醸した広告
シフマンが最初に注目を集めたのは2020年のことだった。当時17歳だったシフマンは、新型コロナウイルスのパンデミックのさなかに、感染者数を追跡するウェブサイトをつくった。現在24歳のシフマンは、多くの人からディストピア的、あるいはSFドラマ「ブラック・ミラー」に出てきそうだと評される端末を開発する会社の経営者として、以前よりはるかに広く知られ、物議を醸す存在にもなっている。
「ぼくもずいぶん大人になりました」と、シフマンはわたしに会うたびに決まって言う。
シフマンのソファの背後には、巨大な額縁(5,000ドルだという)に入った写真が飾られている。Friendペンダントの広告が壁一面に並ぶ、パリの地下鉄の駅を撮影したものだ。シフマンの会社は2025年にニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴで、2026年初めにはパリでこの広告を掲出し、AIの利用を巡って強い反発を招き、論争を呼んだ。
人々は抗議のため広告に落書きし、人間の価値を貶めるものだと批判した。広告を痛烈に批判する見出しを掲げた記事も相次いだ。このマーケティング施策は、実際の製品をはるかに上回る注目を集めることとなった。
「人々にはFriendのような製品は非常にディストピア的で、未来的なものに映ります」とシフマンは語る。「でも、わたしたちは、できる限りアナログなかたちでこれを打ち出そうとしています」
シフマンは、アナログな要素を重視している。自宅にはインターネット回線を引いていない。音楽はレコードプレーヤーで聴き、自身を題材にしたドキュメンタリーをコダックのフィルム「エクタクローム」で撮影している。「撮影を始めた当初は、映画『ソーシャル・ネットワーク』のドキュメンタリー版のような作品を目指していましたが、いまでは『6才のボクが、大人になるまで。』のような作品になりつつあります」とシフマンは言う。物議を醸したマーケティング施策もまたアナログなもので、印刷広告を通じて人と人との交流を促したのだと主張している。
Friendを使う人々の現実
広告キャンペーンへの注目がひと段落したあと、シフマンはFriendの利用者を取り上げた4本の動画を公開した。それらは孤独に苦しむ人々を映した重苦しい内容であった。シフマンは、端末を実際に使っている人たちの姿を見せるため、意図的にそうしたと話す。
「それが人生じゃないですか」とシフマンは言う。「ニューヨークの金融業界で働く人たちの生産性をわずかに高めることよりも、アパラチア地方の町やどこかの町に暮らす人たちに、これがどんな影響を与えているのかのほうによほど興味があります。生産性なんて正直どうでもいいです」
シフマンは、Friendを巡る騒ぎも、それによってメディアの注目を集めたことも、すべて意図したものだったと話す。シフマンは人を怒らせること、少なくとも何らかの感情を抱かせることを楽しんでいるようにも見える。このことから、これらはすべて手の込んだアート作品のようなものにすぎないのではないかと疑う人もいる。わたしはシフマンに、これは実際に製品を売る事業というより、大がかりな話題づくりなのではないかと尋ねた。
「現実なんて終わっています。いまは何もかもが、本物か冗談かもわからない皮肉なものになっています」とシフマンは言う。「もはや神聖なものなどありません。だからFriendは実在する製品である一方、ばかばかしいものでもあるのです」
壁に飾られた作品のほとんどを、自ら描いた大きな絵画が占める自宅を歩き回りながら、シフマンは、Friendが本質的に自己顕示欲に満ちた野心的な試みであることを認めた。
「この取り組み全体は、ある意味でぼく自身と、ぼくがどう感じているかを表すものです」とシフマンは語る。「それを製品に凝縮したのです」
「普通の人」への普及を目指す
それでもFriendはシフマンが実際に売ろうとしている商品であることは確かだ。初回生産分のペンダント5,000個は完売したという。今後は事業を拡大し、第2世代の端末を5万個販売することを目指している。ただし、欧州連合(EU)ではおそらく購入できない。EUの一般データ保護規則(GDPR)が定めるプライバシー要件に対応すると販売コストが高くなりすぎるので、EUでの販売を取りやめる可能性が高いと、シフマンは話している。
この販売目標を達成するには、シフマン自身の性格をゆがんだ鏡のように映し出す、ときに皮肉っぽいこの端末を生活に取り入れる人を増やさなければならない。Friendの利用者は変わった人だという印象をもたれていることは理解しているが、いずれその印象が変わり、「普通の人たち」にも魅力を感じてもらえるようになることを期待しているという。
その一方で、製品の宣伝では今回も、端末をひとりで使う人や、ときどき誰かと一緒に使う人に焦点を当てたものになっていた。利用者がFriendに、自分はいつか結婚できるのか、自分の創作物に価値はあるのかと尋ねる内容だ。映像は鮮烈で、レトロ調の色合いに仕上げられている。しかし、そこにはどこか切実な雰囲気が漂い、ペンダント型のFriendが実際に解決できる以上のものを約束しているように見える。
シフマンは映画制作に強い関心があるようだ。ただし、映画業界については「もうやり尽くされてしまっている」と話す。それでも、会社の動画撮影にはすべてかかわっているという。シフマンが本当に情熱を注いでいるのは映像制作であり、物議を醸す不気味なAIの友人は、そのための手段にすぎないのかもしれない。
「孤独な変わり者を、どうすれば格好よく見せられるでしょうか」とシフマンは言う。「そこが興味深い部分だと思うんです」
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma)
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